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お楽しみはどれからだ

2008年、明けましておめでとうございます。

子年新春にあたり、私、まんだよつお、ついに念願のブログを始めることにしました。テーマは、ずばり、「サブカルチャー全般から探し出した名句・名言・名セリフ集」です。

世の中に名句・名言を集めた本は多く、もっとも有名かつオーソドックスなものには『ことばの花束』(岩波文庫、1984年)があります。この本は、岩波文庫に収められた綺羅星のごとき名作のうちよりえりすぐった名言を集めたもので、この種のアンソロジーのグローバルスタンダードとも言えるものになっています。

ただ、岩波文庫の中からという選択基準、あるいは版元の性格からか、まじめすぎる内容になってしまっているのは、読み手側からすればちょっととっつきにくいよう気もします。

そこに登場したのが、才人和田誠の名著『お楽しみはこれからだ』です。雑誌『キネマ旬報』に長期にわたって連載されていたシリーズをまとめたものですが、連載終了後も発表媒体を変えつつ継続して書き続けられていて、文芸春秋から発行されている単行本も6冊を数えています。

この本の最大の特徴は、対象ジャンルを古今東西の映画の名セリフに限ったことにあります。加えて、思い入れたっぷりの和田誠の名解説が、セリフの周辺をわかりやすく教えてくれるのです。映画を愛してやまない和田誠ならではの、その熱い思いのこもった歴史的名著と言って間違いないでしょう。

私自身、今回のタイトルを『お楽しみはこれからだ』のパロディにさせてもらっているのですが、この本が読者や作家たちに与えた影響はものすごいものがありました。結果、数々の類似本が生まれてきましたが、その中の白眉が、みなもと太郎『漫画の名セリフ―おたのしみはこれもなのじゃ』(立風書房、1991年)だと思います。

この本は、和田誠が映画をベースにやったことを、なんとマンガをベースにやってしまったのです。雑誌『マンガ少年』連載時より注目されていましたが、マンガ家でもあるみなもと太郎の豊富な知識と読書量、そして何よりマンガへの愛情があふれる一冊です。

編者の才気が光るという点では、寺山修司を忘れてはなりません。みずからも言葉の魔術師として一世を風靡した寺山修司には、ロングセラーになっている『ポケットに名言を(角川文庫、1977年)や、『旅の詩集(カッパブックス、1973年)があり、独特の視点から選ばれた、スラングを含む目くるめくような言葉の奔流が楽しめます。寺山ワールドの面目躍如といったところでしょうか。

文学、映画、マンガと続いてきた対象を、テレビやインタビュー記事、あるいは歌謡曲の歌詞といったサブカルチャー全般にまで広げてまとめた成果が、1985年から88年までにわたって発行された現代言語セミナーの編による『別れの言葉辞典』『スルドイ言葉の辞典(以上、冬樹社)、『今度こそ、さようなら―新・別れの言葉辞典(角川文庫)です。

オーソドックスな王道を行く『ことばの花束』の対極に位置する選択にこそ、これらの本の編者グループが持つ見識とセンスが光っています。その時代を伝える言葉は、その時代を生きた人間にしか語ることはできない――このシンプルな事実がこのシリーズ最大の魅力に他なりません。

なお、基本的に私、まんだよつおのブログの内容・構成も、この三部作にならって、肩肘張った名作・純文学など「芸術」よりは、マイナーとか影の文化とか呼ばれ日陰者扱いされてきた、いわゆる「サブカルチャー」の中から、私が感動したり影響を受けたりしたものを選んで進めて行きたいと考えています。

……と、格好つけてはみたものの、私、まんだよつお自身、不安だらけの開幕です。それでも、細く長く、できる限り続けていければと考えています。

「もし世界の終りが明日だとしても私は今日林檎の種子をまくだろう(『ポケットに名言を』よりゲオルグ・ゲオルギウの言葉)

皆様の末永いご愛読をお願いする次第です。

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